日本人、独自の方法で勝つ「ハードワーク」エディー・ジョーンズ

フランスと日本、都会と田舎、中上級階級と庶民など、さまざまなはざまで生きてきた境界人であるため、他の人と違う視点を持った著述家として活動しています。コラム執筆などの依頼も請け負っております。

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W杯で日本に歴史的な勝利をもたらし、日本中を熱狂させたラグビー元日本代表ヘッドコーチがエディー・ジョーンズ

20年以上、ワールドカップで1勝もしていなかった日本のラグビーチームを、2015年9月19日に行われたラグビーワールドカップ・イングランド大会初戦で、優勝候補の一角であった南アフリカに34-32で勝利し、世界を驚かせたラグビー日本代表ヘッドコーチ。

最終的にはワールドカップ後の日本チームの世界ランキングを9位まで押し上げたという歴史的快挙を成し遂げました。

それは、負けることが当たり前だと思っていたラグビーチームを変え、勝利できるチームに変えていったからできたことです

そのエディー・ジョーンズが行った方針が

日本人、独自の方法で勝つ

体格も強みも違うのにもかかわらず、欧米の真似ばかりしていた日本チームに、日本の強みを生かすことが勝つために必須のことであることを見出し、実践することで誰も想像しなかった素晴らしい結果に導いたと言うのです。

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日本独自のラグビーチームであることが大切

フランスにいる年月が長くなる度に、どんどん重要だと思えてくることがあります。それは

「独自性」

そして、自分が生まれ育った日本で培った考え方や、習慣は、フランスでは

「強烈な独自性」

なんだと言うこと。

フランスに来てそんなことを思った人は私だけではないでしょう。

有名になった芸術家の藤田嗣治さんにしても、日本人ならではの独自性で作られた芸術作品は、フランスで成功し、世界的に有名になりました。

1970年の日本万国博覧会で太陽の塔を発表した岡本太郎さんもフランスに来て、何が一流の芸術家にとって大切なことであるか探し、それが独自性であることに気づき、独自性を追及して追及した中でたどり着いたのは「日本」。学ぶために欧州まで来たけど、実は答えは身近なところにあったのかと気が付いたのです。その中でも縄文時代こそ日本の独自性に溢れた時代であることにはっとし、その後、岡本さんは熱心に日本の古来の文化などを研究するようになっていきます。

もちろん、日本だけが特別に独自性を持っているわけではないんです。各国、各国にそれはあます。

体格も習慣も考え方も歴史的ベースも各国違う。それこそが各国の独自性。そして、その違いを生かして競いあうことがまさしく

日本人、独自の方法で勝つ

と言うこと。

そのことを、日本のラグビーチームで実践し、実際に成功に導いた考え方を示したのが、この「ハードワーク」と言う本なのです。

ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング
エディー・ジョーンズ

「ジャパン・ウェイ」。日本人の長所を最大限に活かし、短所を長所に変えることで、実力以上の力を発揮させる、エディー流の必勝法だ。「マイナス思考を捨てれば、誰でも成功できる」「向上心のない努力は無意味」「“完璧”にとらわれるな」「戦いに興奮はいらない」など、彼のメッセージはビジネスにも役に立つものばかり。

エディー・ジョーンズさんの本「ハードワーク」は、特に、今まで読もうと思ってもいなかったのですが、アマゾンがオーディブルと言う本を朗読してくれる形態での本を始めて、一冊目が無料と言うことで、何気に試してみようと思い、目についたのがこの本だったので無料でダウンロードしました。

そしたら、あまりにも芯が通った内容で、感動。

外国のコピーではなくジャパンウェイ

当初日本代表は、外国のやり方に影響され過ぎていたと、ジョーンズさんは言います。

体と体のぶつかり合うラグビーは、体力が大きくものを言うスポーツです。日本人は、外国人に比べて体格的に劣ります。これはどうしようもないことです。

なのに、外国のやり方をまねていては、いつまでも勝てないのは当り前。

そこで、ジョーンズさんは、「日本が世界の舞台で勝つためには、長所を生かし、短所を補う必要がある」と、そのことに考えを集中させたのです。

人には、長所と短所がありますが、二つは表裏一体になっていることが少なくありません。体が大きいということは、力強い半面、動きが鈍くなります。体が小さいということは、力の面では劣りますが、機敏に動けます。

このように短所の裏側には、必ず長所が潜んでいます。これを利用しない手はないと言うのです。

日本人は体格が小さいけれども、それは裏を返せば日本チームは俊敏であることが長所だとし、そのことは他の国にはない優位なことである。だからこそ、それを元に戦略を立てたのです。

それは外国のコピーではなく、日本独自のラグビーをするチームでなければなりません。これが「ジャパン・ウェイ」。

「ジャパン・ウェイ」とは、要するに、「日本人らしさ」を活かすということ。まず、トレーニングのやり方。これは日本人らしい、生真面目で、100パーセントの努力を注ぐもの。

これは、実際本当のことだと思うのです。現在日本は、「欧米がこう言っているから」「海外がそうしているから」と言う、「海外素晴らしいくて日本は酷い説」に溢れおり、「だから海外の真似をしよう」と言うのがとてもさかんに行われていますが、

国の基盤も習慣も違うのだから、海外と日本が違うことは当然であり、ベースが違うのにもかかわらず、ただ真似をしようとしてもうまく行くはずがありません。各国築き上げたきたものは、各国が違う長所や特徴があるから築き上げてきたものです。それを考えないでただ、うまく行ってそうな国の真似しても、成功するはずがありません。

それこそが、欧米の真似をしすぎて負け続けネガティブマインドが染みついた日本のラグビーチームの、一番変えなければいけないマインドだったのです。

明確な目標を持つ

日本はエネルギッシュな国として思い描いていたジョーンズさんが、日本に来てビックリしたといいます。

「人々に強い個性がなく、他人からどう見えるかばかり考えているようだ」

ジョーンズさんが、日本をエネルギッシュと捉えていた一つの理由は、日本人女性である彼の母親と、妻が、とても強い女性だったこともありますが、

それよりも、戦後復興の日本の姿が素晴らしかったからでもあります。

「太平洋戦争で焦土と化した国が、わずか20年ほどで世界第2の経済大国ななると言う、これほど復興と目覚ましい成長を遂げた国が世界の歴史にあるだろうか。

これほどの爆発亭なエネルギーがあった国にあったはずの国にが、今では、人の顔ばかりうかがっている人々になっている。、

「恐らく戦後のある時期まで、豊かな社会を目標にむかって、みんながみんな身を粉にして働いたのでしょう。しかし、日本は50年ほど前に、その目標を達成してしまいました。目標を達成すると言うことは、目標を見失うことになります。豊かになった日本は、経済が停滞期と共に、自らの力を眠らせてしまったのはないでしょうか。」


国民が一丸となれる目標を失った日本

しかも、経済が低迷し、マイナス思考ばっかりが表に出るようになる。

「本当は力があるのに、それを出せなまま弱い状態に甘んじている。その状態が長いため、マイナス思考が身に着き、活路を見出せない。」

だからこそ、大きな目標を持つことが大切となる。

明確で、目標を達成したらはっきりとわかる目標。

それが、日本のラグビーチームにとっては、ワールドカップでした。

選手たちに眠った、日本人本来の力を、どのようにすれば目覚めさせれるか。慢性的な弱さから抜け出し、大きな力に向かって邁進するには、どうすればいいのか。

「日本人は、再び強くならなければならない」

エディー・ジョーンズは、そう思ったのです。

眠った力を呼び起こす

「日本人は、再び強くならなければならないと思った」ジョーンズさんが、本来の力を出せるようにするにはどうすればと考えた時に、思いついたのが

「武士道精神」

日本人のエネルギー元は、武士道精神だと考えました。

武士道精神は、

「信頼」「忠誠心」「努力」

昔、侍と領主の間には「信頼」がありました。その「信頼」に基づいて、侍は藩主に対する「忠誠心」を持っていました。そして忠誠を果たすため、戦(いくさ)にそなえて、日々剣術を磨く「努力」を怠りませんでした。

これこそが、日本人が本来の力を発揮できる、環境。

「武士道」と一言言われると、最近は構えてしまう人もいますが、オーストラリアの価値観の中で育ったジョーンズさんには違うものが見えていたように思えます。

フランスと比べても、確かにこの「信頼」「忠誠心」「努力」がセットと言うのは、大きく違うなと感じました。

フランスはどちらかと言うとこの「信頼」の代わりに「服従」が。日本の「忠誠心」というのはみんなのために行うことを大切にするが、フランスは自分のために何かする比重が大きい。

そう考えると、ジョーンズが、これらが日本の独自性であり、日本がチームが力を発揮するのに、大切にしなくてはいけないこと、と思った理由もなるほどだと思うのです。

信頼について

ジョーンズさんは、年功序列による優遇などは一切行わず、若手も含めて全員を平等に扱い、人前で個人的内容をほどしたりせず、自分も自らの約束を守るをことで、チームとの「信頼」を築きました。

忠誠心について

そして、「忠誠心」については、こう語っています。

「日本人の結束力は世界一。日本人の素晴らしところはいくつもありますが、中でも特に優れているのは粘り強さです。忍耐力と言い換えてもいいかもしれません。例えうまくいかず落ち込んでも、目の前の課題に取り組もうとする。決して根をあげずがんばり続けるのです。他の国の人ならあきらめるところをあきらめない。」

確かに、戦後の復興の姿を見ても、2011年の震災後の姿を見ても、まさにその通りだと思います。

「ある目的があり、それがチームのためになるなら、なんでもする。これが日本人の忠誠心です。自分のためではなく、チームのためになることをするのが、彼らの喜びなのです。」

本当に幸福になりたいなら、自分のためにだけに働かない方がいいと言う話しを聞いたことがあります。自分の利益だけを追い続けて働き続けても、そこに残るのは虚しさだけ。その結果、続けることもできなくなる。だから、人のため働くことが、本当の幸せが自分に訪れると。

そんな働き方をジョーンズさんは「忠誠心」と捉えたようです。そしえ、この忠誠心が、団体競技の場合、素晴らしい大きな力として発揮されることを見抜いていました。そして、チームの忠誠心をどう高めるかを積極的に考えました。

チームの価値観を統一するために、リーダーとして軸をぶれないように保ち、常にその価値観をチームに植え続ける。

価値観を軸として、その価値観からぶれれば、今まで優遇されてきた年長者でも練習からはずすなど、チーム全体が不平等にならないようにしました。

努力について

「努力」については、こういっています。

ものごとに真剣に取り組むことを「ハードワーク」と言います。日本語の「頑張る」とは意味合いが違います。「100%の努力を傾ける」ことと、「今よりよくなろう」と言う意識が必要です。その意識がなければ、頑張りは無駄になります。

「私なんかどうせだめだ」と心の中で思っていたり、「妙な自己満足」だけでがんばっていても、その努力は実りません。努力は精神的なものと、身体的な物が共存して、初めて実りあるものになります。

トレーニングはトレーニングのためにトレーニングではない。いくら根性主義的な訓練をしてもダメ。ちゃんとネガティブマインドを打ち払い、向上したいと言う精神をもって「努力」をしてこそ価値がある。

まさにその通りですね。

その他にも、それらを実践するためのエッセンスが豊富に書かれている「ハードワーク」

フランスのチームに居た、五郎丸選手についての見解なども書かれています。

2019年の日本でのワールドカップをひかえた今こそ、ぜひ読んでみるときっとおもしろいですよ(^^♪、

他にも内容はいっぱいのハードワークの目次はこちら

第一章 日本人独自のやり方で勝つ
目標は不可能そうなほど大きなものがよい/スケジュールを固定するな/短所は長所にもなりえる/「完璧」にとらわれすぎる日本人 他

第二章 どう戦略を立てるか
「繰り返し」の効果/言葉を現実にする方法/部下を公平に扱うことの大事さ/目先の勝敗は気にしなくてよい/リスクを負わないと、進歩はない/明確なビジョンを持つ 他

第三章 何が勝敗を分けるか
戦いに興奮はいらない/国歌を歌えないチームが弱い理由/コーチはセールスマンに似ている/「やってみなはれ」の素晴らしさ/状況判断が苦手な日本人/成功の後に、落とし穴がある 他

第四章 成功は準備がすべて

教わる立場で考える/怒る時は必ず演技で/感情で人を評価するな/勇気とは慣れた自分を捨てること/自分を追い込むための訓練/言い訳が成功を阻んでいる/決断するから進歩が生まれる/明日のために準備せよ 他
あとがきーー部下がリーダーを超える時

ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング
エディー・ジョーンズ

「ジャパン・ウェイ」。日本人の長所を最大限に活かし、短所を長所に変えることで、実力以上の力を発揮させる、エディー流の必勝法だ。「マイナス思考を捨てれば、誰でも成功できる」「向上心のない努力は無意味」「“完璧”にとらわれるな」「戦いに興奮はいらない」など、彼のメッセージはビジネスにも役に立つものばかり。

追記

実は、このブログ記事は世に出すか悩んでいたのですが。だって、誰も興味ないかな。。と思って。

それが、この記事を書き終わったぐらいに、フランスの12月の風物詩にもなっていますが、郵便屋さんがカレンダーを持ってきました。カレンダーにお金を払いながら、毎年世間話しをしますが、

そしたら、なんと、今年は、「日本のラグビーが強い」と言い出したのです。かなり感動しました。そこで、無事、この記事を公開したわけです(^^♪ぜひ、知らせるべき内容だと確信するに至りました。

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