フランスがとんでもない哲学の問題を出す意味

フランスの高等師範学校ENSの哲学の問題が“Expliquer”「説明する」と一言だったことが話題になりましたが、

フランスのとんでもない試験問題!

思うに、ENSの審査官を訴える方法あるんじゃないの。A4使って、一言とかありえない。

なんて言葉がでるほど、フランス国内でも適当に作っているだけじゃないかとの声が(笑)

それを受けて、フランスの言語学者Alain Bentolilaさんによるこの問題には意味があると言う記事が出されました。

その意味とは?

“Expliquer”「説明する」と一言だけの問題に意味はあるのか?

「ENSの哲学の問題で”Expliquer”が出たことは突拍子もないことではない。今の旬の話題だ」
“Expliquer”: le sujet de philo du concours de l’ENS n’est pas saugrenu. Il est d’actualité

言語学者のAlain Bentolilaさん曰く

“Expliquer” この動詞について考えること自体が重要なのだ。
他の人の言葉を「解釈する」「理解する」という頭のいい二つの選択をして、今起きている野蛮行為に言葉で対応することが必要。

「説明することは最高の武器」

「野蛮行為の防波堤」

etc

なるほど。多分、この野蛮行為と言うのは、最近フランス国内や世界で起こっている宗教の違いになどによる争いについてのことでしょうか?

だから、こういったいろんな事象とリンクする言葉“Expliquer”「説明する」と言う一単語が厳選に選出されたと主張してるんですね。

それにしても。。。

その一言から紡ぎだされる言葉の量のすごいこと。

旬の出来事にリンクする言葉だからと言うのが、ほんとに出題者の意図することなのかは分かりませんが、この長文の記事を読んでいると、Bentolilaさんは”Expliquer”と言う言葉に対してこれだけのことを考えたことがわかります。

しかも、創作で書かれている内容ではなく、現実に起こっている事実を踏まえて「説明する」言葉について語り、それが問題として選ばれた理由だと書いているのです。

そう、哲学の試験問題は「独創性や創造性」を求められているのではなく、

こういった「思考力」が求められており、

この記事自体がその培った思考力をフル活用している記事なのかもしれません。

哲学の試験の採点内容

ちなみに、こういった哲学の試験の採点内容は、

京都大学高等教育研究第18号 バカロレア哲学試験は何を評価しているのか?

に、フランスに出ている参考書を元に日本語でまとめられています。

0-5点 :
問題文あるいはテクストがまったく理解されていない。内容のない答案。受験者は小論文あるいは哲学のテクスト説明が何かを知らない。
6-10点:
問題文あるいはテクストが理解されていない(6-7点)。しかし書き、考えをまとめる努力がみられる(8-9点)。大部分の答案はこの範囲に属する。
11-15点:
主題あるいはテクストが良く理解されている。受験者は小論文あるいはテクスト説明ができる。分析でき、議論でき、自分の知っていることを繰り返すだけでは満足していない。
16-20点:
あらゆるすぐれた美点を持った答案(問いの理解、諸観念の構成、引用の豊富さ、など)。

これを見ると、書き方やまとめ方を知っていれば合格点の10点ぐらいは取れて、それプラス分析、議論、疑問、引用の多さ等、思考していることと、知識が深いことを表せれば点数が上がるようです。

この記事の中には、参考書に掲載された添削例を見ながら、実際にどのような点が評価の対象となっているのかの具体例を始め、フランスの哲学試験についての詳細が書かれており、とても参考になります。

そして、日本の学生がこういう問題が不得意な点についてはこう書かれています。

確かに、日本の高校生がこの問いに対して満足のいく答案を書くことはできないと思われる。しかし、これらの問いは、哲学教育のプログラムに沿って授業を受け、準備をしてきた生徒に対して投げかけられたものである。フランスの高校生はこのような問いに答える訓練を受けて来たのであり、ここで試されているのは、個人の哲学的才能や文才ではなく、一年の継続的訓練の成果なのである。

フランス人が勉強している文の「型」や、その思考方法はあまり日本では訓練されてないと言う事なんですね。

哲学の試験は、個人の哲学的才能や文才を見る試験ではなさそうです。

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